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《みちる》 ボランティア通訳

Hi! 今日のテーマは『ボランティア通訳』にしましょう。

国際センターの語学ボランティアで英語の通訳をしていたときの事です。
仕事の種類はいろいろあり、どれも私には楽しい勉強の場になりました。
 
あるときは外国人と同行して観光地へでかけたり、
日本文化を紹介するために博物館や美術館へ行ったりしました。
またあるときは、ミツバチの養蜂業者の方々の国際会議の出席者と
野山を掻き分けて養蜂家めぐりをすることになったり、
またスポーツの国際競技の参加のお供をしたり、
囲碁の世界大会に同行したりもしました。
同行する際には、外国人と日本人の両方の出席者のために、
日本料理と外国料理を同時に作ったりすることもありました。
オレゴン州へ40人ほどの日本の中学生のホームステイの付き添いで
行ったこともありましたよ。
また、日本の伝統文化を外国人と一緒に体験する機会も多く、
陶器を焼いたり、和紙の紙すきなどまで、私も一緒にすることもありました。
その度に、いろいろな方々から手ほどきを受け、教えてもらい、
新しいことを学び、興味が湧きました。
 
もともと私には知らない分野も多く、
ボランティアの依頼を受けるといつも大急ぎで下調べをします。
専門用語や歴史などの背景も、ある程度調べてみたくなるのです。
ときには外国人によく日本のことを分かってもらいたいので、
そのためのクイズを考えたりもしました。
そして、自分なりに工夫して初対面の外国人と楽しく過せるように
準備をしておくのが常でした。
 
だから『ボランティア』は、日常の仕事以外にあるわけですから、
かなりの労力と時間を必要とします。
確かに二重生活ですから、忙しいですよ。
でも「volunteer」は「人助けをする」「感謝されたい」
「自分を犠牲にして奉仕する」など
というのでは全くありません。
「volunteer」とは「自分から進んでやろうとする気持ち」から
行動することです。
自分の生活にムリをしないで、出来る時間を『ボランティア』に
利用するのです。
 
でも、「ボランティアはお金をもらえないんでしょう…?」と言う人も
いるでしょうか?
そうですね、たとえ場合によって多少のお金をもらえたとしても、
それは交通費とその期間内の必要な食費や最低限の経費ぐらいですね。

でも、もし私がこの『ボランティア』をしなかったら、
私の人生は違っていたかもしれません…。
新しい分野を知る機会もなく、新しい知り合いも出来ず、
新しい世界へ飛び出す機会も得られなかっただろう、と考えてしまいます。
その価値は、時給や日給の報酬に比べられないほど、
大きなものだと確信しているのです。

ですから、どれも私には「楽しい勉強の場」になったと
明言できるのですよ。
何よりも世界中に知り合いや友人が出来、未知の情報が
随時に流れてくる…なんて嬉しいことです。

ボランティアの依頼は、世界各国から代表者が集まるなど、
国際的な大会を催す時などによく来ました。
そのような場合、もちろん「プロの通訳」が言語ごとに何人か出席し、
各講師に付きます。
プロの通訳の人は、余計な説明や自分の考え等を加えたりしないで、
一字一句、正確に通訳するのです。

では『ボランティア通訳』は、何をするのでしょうか?
難しい通訳はしなくてよいのです。
外国からの出席者の…いわゆる「話し相手」をします。
会場では、たいていお互いに初対面の方ばかりが、各国から集まってきます。
何か戸惑っていたり、ポツンと孤立している方がいたら声をかけて、
場合によって相談に乗ったりもしてあげます。
そして、その場の雰囲気を和やかにするように心がけ、
質問に答えたり、説明してあげたりします。
集まった方々が、スムーズに大会を進行させ、よい印象をもって
それぞれの国へ帰られるようにとお手伝いするのです。

以前、こんなことがありました。
あるとき消防関係の大会があり、『ボランティア通訳』の依頼が来ました。
ちょうど日本特有のじめじめした蒸し暑い日でした。

外国からの出席者は、宿泊しているホテルのロビーに集合します。
私たちもロビーへ迎えに行き、ホテルから会場まで大型バスで一緒に行きました。
その途中、バスの中で自己紹介をして、いろいろ情報交換をするのが
いつものパターンです。
たいてい、会場に着くまでには、冗談を言ったりして、
すっかり仲良しになってしまいます。
その日も、私の周りは英語圏の方々が座り、始まるまで一緒に
お喋りを楽しんでいました。
 
やがて、司会者がマイクの前に進み、「ゴッホン…」と咳払いをして 
話し始めました。
 
「えー、では、僭越(せんえつ)ながら一言、皆様にご挨拶をさせていただきます。皆様、本日はお忙しいなかを、遠路はるばる私どもの会場へお越しくださいまして 私ども一同、心より感謝しております。本日、皆様の前で、このようにご挨拶できることを大変光栄に思っておる次第でございます。また、本日は気候不順のおりから、あいにくの空模様となりましたけれども、大変お足元の悪いなかを、このように大勢の方々にお集まりいただきまして…」 

周りの外国人達は、サッパリわかりませんから、黙ってみていました。
私は 一応メモをとっていましたが、ちょっと唖然としていました。

「…それでは、皆様のお気に召すかどうか分かりませんが、なにとぞ、今日一日、私どもの用意したプログラムで、ごゆるりとお過ごし頂けますことを願ってやみません。…」

日本人らしい挨拶でした。
周りの外国人は、皆「何だって?」と言う顔をして私を見ました。

Ladies and Gentlemen, thank you for coming today.
 (皆さま来て下さって有難うございます。)
 We're very happy to meet you. 
 (お会いできてうれしいです。)
 We hope you'll enjoy our program and have a nice day.
 (私たちのプログラムでよい一日をお過ごしください。)」

と私はこの3文だけで説明しました。
 
「それだけ?」
「もっと長かったみたいだけど…」
「他には、本当になにも言わなかったのか?」
と急に皆が、私に言うのです。

「That's all. (それで全部ですよ。)」
と言っても、皆は半信半疑の様子でした。
 
そこで私はメモを見ながら、不必要な長い前置きを正確に訳してあげました。
すると、皆はあきれた顔をして口々に、
「What an introduction! (なんて前置きだ!)
 You're a good interpreter.(うまく訳したね。)」
と言って、笑って理解してくれました。


一日のプログラムが終わる頃、私の手元には、
カッコイイ消防服姿の写真や各国のバッヂ、
アドレス・メモ、
ポストカードや小さなお土産などたくさんが寄せられていました。
新しい知り合いがまた出来ました。
これはお金では買えない報酬だと思いませんか?

みなさんも、学業や仕事の空き時間に
『ボランティア』の仕事を経験してみませんか?


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プロフィール

【みちる先生】
横浜市出身。
英語教育と日本語教育にたずさわり、その教え子達は現在、世界の第一線で活躍中。
また数多くの国々を訪問し、国際交流のボランティア活動も展開。

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