《みちる》 スコットモニュメント
Hi! 『Scott Monument』のお話をしましょう。
つまり、スコットランドのエディンバラにある「スコット記念塔」のことです。
もし行ったことがある人は、思い出しながら読んでくださいね。
そのスコットランド人の若夫婦に初めて会ったのは、アメリカでの
あるホームパーティーでした。
奥様のIさんは少女時代から そこの娘さんとペンパル(pen pal)
だったそうです。
長年、スコットランドとアメリカで文通していたわけですね。
二人ともとても楽しい方達なので、会話が弾み、私もその仲間に
入れていただくことになりました。
そのとき以来、私たちの『三角関係のペンパル』が始まりました。
それから3年後のことです。
「ぜひ、スコットランドへ遊びにいらっしゃい!」と毎回のように
Iさんからのお手紙に書いてあるので、本当に訪ねることにしました。
ロンドンでロングステイをした後に立ち寄ることにしたので、
そのときのスコットランドでの滞在は短いものになりましたが、
Iさんと再会して過ごした時間は、一つ一つの瞬間が心に残るものでした。
その想い出の一つが、Iさんと一緒に行った『Scott Monument』です。
それは、エディンバラのプリンシズ・ストリートにある、
ゴシック様式の代表的な建物です。
スコットランドの近代歴史小説の祖と言われる
サー・ウォルター・スコットの記念碑です。
1844年に建立されたそうですが、高さは約61mで、文豪の記念碑では
世界最大だそうです。
裏口に回ると階段があり、上まで登れるようになっていました。

[ Scott Monument ]
Iさんと彼女の親友のHさんが一緒に私を案内してくれました。
Hさんは入り口の階段の前で私に、
「サー・ウォルター・スコットを知っている?」と訊きました。
私は深くうなずきながら、学生時代のPoetry(英詩)の授業を
思い出しました。
スコットランドは本当に絵のように美しい国で、英詩や英文学の
宝庫といわれています。
英語を勉強する人は、本場のイギリスとスコットランドを一度は
訪れたいと願うでしょう。
もちろん、私もその一人でしたよ。
イギリスを訪ねると、シェイクスピアの生地を訪ねたり、
ディケンズの『二都物語』に登場するドーバー海峡を自分の目で
見たいと思って実際に行ってみたり、毎日のように文学の舞台に
なった場所を歩き回ったものです。
「スコットは長詩の『湖上の麗人(The Lady of the Lake)』や
歴史小説の『アイヴァンホー(Ivanhoe)』が有名でしょ?」
と言うと、Hさんは喜んで言いました。
「ここは彼の偉業を称えて建てた記念碑なのよ。
世界一のMonumentよ。 ちょっと階段が沢山あるけど、
上まで登ってみない? せっかく日本から来たのだから どう?」
Hさんのテキパキとした積極的な誘いに、私も押されるままに
すぐに同意して、一緒に登ることになりました。
初めはワイワイ騒ぎながら、楽しくスタートしました。
大声で私たちが話すので、その声が塔の中に共鳴して
ワオンワオン…と響いていました。
ところが、
階段というものは、段数よりも勾配と幅によって疲れ方にも
大きな差が出てきます。
その建物は尖塔になっているので、あまり前方が見えません。
どこまでも目の前に続く、らせん階段。
そして「この階段は決して登り易い階段ではないようだ…」と
すぐに分かってきました。
『Keep Left (左側通行)』と書いてあるのですが、
上から子供たちが右から左から駆け下りてきたり
また、ゆっくりゆっくり、マイペースで登っていく人もいて、
なかなか自分のペースで前に進めません。
登っても登っても…、階段はどこまでも続き…、
初めの勢いと元気は いつの間にか無くなっていきました。
階段にバッグを下ろして一休みしたいくらいでした。
上から降りてきた中年の男の人に、
「上まであと、どのくらいですか?」と声をかけてみました。
「もう少しだよ。一番上は素晴しい見晴らしだよ。楽しんでいらっしゃい!」
と、その人は笑顔で言ってくれました。
それを聞いて少し元気を取り戻し 私はまたひたすら階段を登りました。
それから、また何十段も登りました。
でも、十分に登ったはずなのに、…まだ階段は続いています。
「さっきすれ違った男の人は『もう少し』と言ったのに…」
と、つい私は不満そうに言ってしまいました。
すると、Hさんは大きな声で笑いました。
「みんな、こういうときは『もう少しだから頑張って!』と
言うのよ。『まだ100段以上あるよ。これからが苦しいよ!』
なんてゼッタイ言わないものよ」
「なるほど…」と、初めて思いやりのある励ましの言葉(?)に
気づき、感動してしまいました。
尖塔を登るので、だんだんと階段の幅も狭くなってきます。
階段を数える気力もなく…、
暗い階段がこのまま永遠に続いているような気までしてきました。

[Scott Monumentの狭いらせん階段]
何事も途中で投げ出すことは嫌いな私です。
しかしながら、体力のことになると弱虫で自信がありません。
ペースはますます遅くなって…。
とうとう「もう私は、この辺で…」と弱音を吐いてしまいました。
そのときです。
Hさんが私の顔をじっと見つめて、こう真剣に言ったのです。
「あなたは遠い日本から、わざわざ何時間も飛行機に乗ってここへ
来たんでしょう? そんなに度々、ここへ来られると思う?
下の『入口』であなたは『登りたい』って言ったでしょう?
その気持ちを貫いたら、どう?
( How about carrying out your original intention? )
上まで登ると証明書をもらえるのよ!
それはスコットランドのどのお土産よりも価値があるんだから!」
本当に私はびっくりしました。
「無理しなくていい」などとやさしそうに言われるより、
何十倍も嬉しく温かく強く感じました。
日本にいて私がもし弱音を吐いたら、まわりの人たちは
Hさんのような厳しい言葉をぶつけてくれるでしょうか?
もし途中で引き返していたら、私に何が得られたでしょうか?
苦しさから逃れた喜び?
いいえ、きっと「後悔の念」以外、何も残らなかったでしょう。
Hさんの率直な言葉は、まさに私の心の琴線に触れたように響きました。
そして、
「287段を登った」という『Certificate(証明書)』は、私にとって
忘れられないHさんの言葉とともに貴重な宝物になったわけです。
サー・ウォルター・スコット(Sir Walter Scott, 1771~1832)は
62年間の生涯を終えるまで、30作ぐらいの大作を残しました。
不眠不休の日々を過しながら、英文学史上に大きな影響を与える作品を
書いたと云われています。
苦しくつらい日々を克服して、数々の歴史小説に壮麗な実例を
提供したわけです。
私たち現代人の生活には、高校受験、大学受験、就職、結婚…と
異なった形で節目がありますね。
多くの人達は、目標と希望を抱いてスタートし…、進みます。
時には自信を失いかけ…、それでもゴールを夢見て努力し、
やっと喜びを手に入れた時、苦しかったことを忘れてしまうほど
達成感を感じます。
でも、その喜びの『入口』で、また新たな希望と決意をもって
踏み出すことになります。
その『入口』で抱いた喜びと決意はしばらくすると、新しい現実の中で
少しずつ薄れて忘れかけてしまうかもしれません。
新しい現実は、いつも『ばら色』ではないでしょうから…。
『Scott Monument』を訪れてから、もう何年も経ちました。
その後、いつも私はこう思うようにしています。
「弱音を吐きたくなったときは、スタートラインに立ったときの
『希望』と『決意』を再確認してみよう!」
自分の『入口時代』のアルバムや日記が当時の自分を
思い起こさせてくれることもあります。
現在ではHさんのように言ってくれる人は、私のまわりには
もうあまりいないでしょうから…。
「新年の決意」はもちろん、「今月の決意」「今朝の決意」でも、
ちょっとメモって、なるべく実行するようにしています。

[エディンバラの風景]
つまり、スコットランドのエディンバラにある「スコット記念塔」のことです。
もし行ったことがある人は、思い出しながら読んでくださいね。
そのスコットランド人の若夫婦に初めて会ったのは、アメリカでの
あるホームパーティーでした。
奥様のIさんは少女時代から そこの娘さんとペンパル(pen pal)
だったそうです。
長年、スコットランドとアメリカで文通していたわけですね。
二人ともとても楽しい方達なので、会話が弾み、私もその仲間に
入れていただくことになりました。
そのとき以来、私たちの『三角関係のペンパル』が始まりました。
それから3年後のことです。
「ぜひ、スコットランドへ遊びにいらっしゃい!」と毎回のように
Iさんからのお手紙に書いてあるので、本当に訪ねることにしました。
ロンドンでロングステイをした後に立ち寄ることにしたので、
そのときのスコットランドでの滞在は短いものになりましたが、
Iさんと再会して過ごした時間は、一つ一つの瞬間が心に残るものでした。
その想い出の一つが、Iさんと一緒に行った『Scott Monument』です。
それは、エディンバラのプリンシズ・ストリートにある、
ゴシック様式の代表的な建物です。
スコットランドの近代歴史小説の祖と言われる
サー・ウォルター・スコットの記念碑です。
1844年に建立されたそうですが、高さは約61mで、文豪の記念碑では
世界最大だそうです。
裏口に回ると階段があり、上まで登れるようになっていました。

[ Scott Monument ]
Iさんと彼女の親友のHさんが一緒に私を案内してくれました。
Hさんは入り口の階段の前で私に、
「サー・ウォルター・スコットを知っている?」と訊きました。
私は深くうなずきながら、学生時代のPoetry(英詩)の授業を
思い出しました。
スコットランドは本当に絵のように美しい国で、英詩や英文学の
宝庫といわれています。
英語を勉強する人は、本場のイギリスとスコットランドを一度は
訪れたいと願うでしょう。
もちろん、私もその一人でしたよ。
イギリスを訪ねると、シェイクスピアの生地を訪ねたり、
ディケンズの『二都物語』に登場するドーバー海峡を自分の目で
見たいと思って実際に行ってみたり、毎日のように文学の舞台に
なった場所を歩き回ったものです。
「スコットは長詩の『湖上の麗人(The Lady of the Lake)』や
歴史小説の『アイヴァンホー(Ivanhoe)』が有名でしょ?」
と言うと、Hさんは喜んで言いました。
「ここは彼の偉業を称えて建てた記念碑なのよ。
世界一のMonumentよ。 ちょっと階段が沢山あるけど、
上まで登ってみない? せっかく日本から来たのだから どう?」
Hさんのテキパキとした積極的な誘いに、私も押されるままに
すぐに同意して、一緒に登ることになりました。
初めはワイワイ騒ぎながら、楽しくスタートしました。
大声で私たちが話すので、その声が塔の中に共鳴して
ワオンワオン…と響いていました。
ところが、
階段というものは、段数よりも勾配と幅によって疲れ方にも
大きな差が出てきます。
その建物は尖塔になっているので、あまり前方が見えません。
どこまでも目の前に続く、らせん階段。
そして「この階段は決して登り易い階段ではないようだ…」と
すぐに分かってきました。
『Keep Left (左側通行)』と書いてあるのですが、
上から子供たちが右から左から駆け下りてきたり
また、ゆっくりゆっくり、マイペースで登っていく人もいて、
なかなか自分のペースで前に進めません。
登っても登っても…、階段はどこまでも続き…、
初めの勢いと元気は いつの間にか無くなっていきました。
階段にバッグを下ろして一休みしたいくらいでした。
上から降りてきた中年の男の人に、
「上まであと、どのくらいですか?」と声をかけてみました。
「もう少しだよ。一番上は素晴しい見晴らしだよ。楽しんでいらっしゃい!」
と、その人は笑顔で言ってくれました。
それを聞いて少し元気を取り戻し 私はまたひたすら階段を登りました。
それから、また何十段も登りました。
でも、十分に登ったはずなのに、…まだ階段は続いています。
「さっきすれ違った男の人は『もう少し』と言ったのに…」
と、つい私は不満そうに言ってしまいました。
すると、Hさんは大きな声で笑いました。
「みんな、こういうときは『もう少しだから頑張って!』と
言うのよ。『まだ100段以上あるよ。これからが苦しいよ!』
なんてゼッタイ言わないものよ」
「なるほど…」と、初めて思いやりのある励ましの言葉(?)に
気づき、感動してしまいました。
尖塔を登るので、だんだんと階段の幅も狭くなってきます。
階段を数える気力もなく…、
暗い階段がこのまま永遠に続いているような気までしてきました。

[Scott Monumentの狭いらせん階段]
何事も途中で投げ出すことは嫌いな私です。
しかしながら、体力のことになると弱虫で自信がありません。
ペースはますます遅くなって…。
とうとう「もう私は、この辺で…」と弱音を吐いてしまいました。
そのときです。
Hさんが私の顔をじっと見つめて、こう真剣に言ったのです。
「あなたは遠い日本から、わざわざ何時間も飛行機に乗ってここへ
来たんでしょう? そんなに度々、ここへ来られると思う?
下の『入口』であなたは『登りたい』って言ったでしょう?
その気持ちを貫いたら、どう?
( How about carrying out your original intention? )
上まで登ると証明書をもらえるのよ!
それはスコットランドのどのお土産よりも価値があるんだから!」
本当に私はびっくりしました。
「無理しなくていい」などとやさしそうに言われるより、
何十倍も嬉しく温かく強く感じました。
日本にいて私がもし弱音を吐いたら、まわりの人たちは
Hさんのような厳しい言葉をぶつけてくれるでしょうか?
もし途中で引き返していたら、私に何が得られたでしょうか?
苦しさから逃れた喜び?
いいえ、きっと「後悔の念」以外、何も残らなかったでしょう。
Hさんの率直な言葉は、まさに私の心の琴線に触れたように響きました。
そして、
「287段を登った」という『Certificate(証明書)』は、私にとって
忘れられないHさんの言葉とともに貴重な宝物になったわけです。
サー・ウォルター・スコット(Sir Walter Scott, 1771~1832)は
62年間の生涯を終えるまで、30作ぐらいの大作を残しました。
不眠不休の日々を過しながら、英文学史上に大きな影響を与える作品を
書いたと云われています。
苦しくつらい日々を克服して、数々の歴史小説に壮麗な実例を
提供したわけです。
私たち現代人の生活には、高校受験、大学受験、就職、結婚…と
異なった形で節目がありますね。
多くの人達は、目標と希望を抱いてスタートし…、進みます。
時には自信を失いかけ…、それでもゴールを夢見て努力し、
やっと喜びを手に入れた時、苦しかったことを忘れてしまうほど
達成感を感じます。
でも、その喜びの『入口』で、また新たな希望と決意をもって
踏み出すことになります。
その『入口』で抱いた喜びと決意はしばらくすると、新しい現実の中で
少しずつ薄れて忘れかけてしまうかもしれません。
新しい現実は、いつも『ばら色』ではないでしょうから…。
『Scott Monument』を訪れてから、もう何年も経ちました。
その後、いつも私はこう思うようにしています。
「弱音を吐きたくなったときは、スタートラインに立ったときの
『希望』と『決意』を再確認してみよう!」
自分の『入口時代』のアルバムや日記が当時の自分を
思い起こさせてくれることもあります。
現在ではHさんのように言ってくれる人は、私のまわりには
もうあまりいないでしょうから…。
「新年の決意」はもちろん、「今月の決意」「今朝の決意」でも、
ちょっとメモって、なるべく実行するようにしています。

[エディンバラの風景]
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